採用戦略の基本:少子高齢化時代における採用戦略の重要性

当事務所のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。今回は、多くの企業様からご相談をいただく「効果的な採用戦略」について、特に「会社のビジョンと価値観を伝える重要性」をテーマにお話しさせていただきます。

目次

なぜ今、採用戦略の見直しが必要なのか

現在、日本の労働市場は大きな転換期を迎えています。少子高齢化による労働人口の減少、働き方の多様化、そして若い世代の価値観の変化など、採用環境は年々厳しさを増しています。この状況下で、単に「人手が欲しい」という理由だけで採用活動を行っても、良い人材の確保は難しくなっています。働く目的が「収入」から「自己実現」へ意識が変化する中、自社の存在意義や社会への影響力を明確に伝えられるかどうかが、優秀な人材を引き寄せる分岐点となります。

採用戦略の基本とは何か

効果的な採用戦略の基本は、「自社の魅力を正確に伝えること」にあります。ここでいう魅力とは、単に待遇の良さや職場環境の快適さだけではありません。会社が大切にしている価値観や、目指している未来(ビジョン)こそが、真の魅力なのです。

採用活動は「会社と求職者のマッチング」であり、お互いにとって最適な出会いを実現するプロセスです。このマッチングがうまくいかないと、入社後のミスマッチによる早期退職や職場不適応といった問題が発生してしまいます。

ビジョンと価値観を明確にする重要性

多くの中小企業では「ビジョンや価値観はあるけれど、言語化されていない」というケースをよく見かけます。創業者や経営者の想いは確かにあるのに、それが社内で共有されておらず、もちろん社外にも伝わっていないというのです。

ビジョンと価値観を明確にすることには、次のような効果があります

  1. 採用のミスマッチ防止: 会社の方向性や大切にしていることを事前に伝えることで、「こんな会社だと思っていなかった」という入社後の失望を減らせます。
  2. 入社後の社員の行動指針になる: 日々の業務で判断に迷ったとき、会社の価値観が道しるべになります。
  3. 組織の一体感の醸成: 共通の目標や価値観があることで、部門を超えた協力体制が生まれやすくなります。
  4. 採用ブランディングの基盤: 一貫したメッセージを発信し続けることで、求職者の中に「あの会社らしさ」というイメージが形成されます。

ビジョンと価値観を明確化するためのステップ

それでは、具体的にどのようにビジョンと価値観を明確にすればよいのでしょうか。当事務所では、次のようなステップをお勧めしています。

STEP
経営者自身の想いを掘り下げる

まずは経営者自身が「なぜこの事業を始めたのか」「どんな社会的課題を解決したいのか」「どんな会社にしたいのか」を言語化することが大切です。創業のきっかけやターニングポイントとなった出来事など、会社のストーリーを整理しましょう。

STEP
現在の社員の声を集める

すでに働いている社員が「この会社の何に魅力を感じているか」「どんな価値観に共感しているか」を聞き取ることで、経営者が気づいていない魅力が見つかることもあります。社員アンケートやインタビューを実施してみましょう。

STEP
顧客からのフィードバックを活用する

「なぜ他社ではなく自社を選んでくれたのか」という顧客の声にも、自社の強みや独自性が隠れています。顧客満足度調査や営業担当者からの情報収集も有効です。

STEP
言語化し、整理する

集めた情報を基に、「ビジョン(目指す未来)」「ミッション(社会的使命)」「バリュー(大切にする価値観)」などの形で整理します。難しい言葉や抽象的な表現ではなく、社員全員が理解でき、日常的に使える言葉選びが重要です。

採用活動にビジョンと価値観を活かす方法

明確化したビジョンと価値観を採用活動に活かす具体的な方法をご紹介します。

1. 求人票への反映

多くの企業の求人票は、業務内容や応募条件が中心で、「なぜその仕事をするのか」「どんな価値観で仕事に取り組むのか」が伝わりにくくなっています。求人票の冒頭や「企業からのメッセージ」欄に、会社のビジョンや大切にしている価値観を簡潔に記載しましょう。

2. 採用サイトでのストーリーテリング

会社のウェブサイトや採用ページでは、数字やスペックだけでなく、創業ストーリーや社員のインタビューなど、「人」の視点から会社の価値観を伝える工夫をしましょう。写真や動画を活用し、言葉だけでは伝わりにくい「会社の雰囲気」も伝えることが効果的です。

3. 面接での伝え方

面接は、会社のビジョンと価値観を直接伝える貴重な機会です。「当社ではこういう価値観を大切にしています」と一方的に伝えるだけでなく、「あなたが仕事で大切にしていることは何ですか?」と質問し、相互理解を深めることが重要です。

面接官によって伝えることが異なると、応募者に混乱を与えます。面接官全員が一貫したメッセージを伝えられるよう、「面接ガイドライン」を作成しておくことをお勧めします。

4. インターンシップや会社見学の活用

長時間の面接よりも、実際に会社で過ごす時間の方が会社の雰囲気や価値観は伝わりやすいものです。1日インターンシップや職場見学会など、応募者が社員と交流できる機会を設けましょう。その際も「なぜそのような仕事の進め方をしているのか」「どんな価値観に基づいた判断なのか」を意識的に伝えることが大切です。

ビジョンと価値観を伝える際の注意点

ビジョンや価値観を伝える際には、次のような点に注意が必要です。

1. 実態とかけ離れていないか

「チームワークを大切にしています」と言いながら、実際の職場では個人主義的な評価制度しかない、というようなギャップがあると、入社後の失望につながります。伝えるビジョンや価値観は、現実の組織風土や制度と一致しているかを確認しましょう。

2. 具体的なエピソードで裏付けられているか

抽象的な言葉だけでは、本当にその価値観が実践されているのか疑問に思われます。「この価値観に基づいて、こんな判断をしました」「このビジョンを実現するために、こんな取り組みをしています」という具体例を用意しておきましょう。

3. 一貫性はあるか

求人票、会社案内、面接での説明など、あらゆる接点で一貫したメッセージを発信することが重要です。担当者によって伝えることが違うと、会社の信頼性が損なわれます。

成功事例:ビジョンと価値観の明確化で採用成功した中小企業

当事務所がサポートした事例をいくつかご紹介します。

事例1:製造業A社(従業員50名)

課題: 技術者の採用に苦戦。大手企業と比べて給与面で競争力がない。

取り組み: 「町工場から世界の課題を解決する」というビジョンと、「失敗を恐れず挑戦する文化」という価値観を明確化。社長自らが開発秘話を語る動画を採用サイトに掲載。

結果: 応募者数は前年比2倍に。「給与は他社より低くても、この会社で成長したい」という志の高い若手技術者の採用に成功。

事例2:介護サービスB社(従業員80名)

課題: 慢性的な人手不足。業界全体のネガティブイメージもあり、応募が少ない。

取り組み: 「その人らしく生きられる社会をつくる」というビジョンと、現場スタッフの「利用者の笑顔」エピソードを採用活動の中心に据える。

結果: 未経験者からの応募が前年比30%増加。採用後の早期離職率も60%から20%に減少。

まとめ:採用戦略の基本は「共感」を呼ぶこと

採用活動は、単に「人を集める」ことではなく、会社のビジョンや価値観に共感してくれる「仲間」を見つけるプロセスです。そのためには、まず自社の魅力を正確に言語化し、様々な接点で一貫して伝えていくことが重要です。

共感を呼ぶ採用活動ができれば、入社後のミスマッチも減り、社員の定着率や満足度も高まります。それは結果として、会社の持続的な成長につながっていくのです。

「ウチには魅力なんてない」と諦める前に、社員や顧客の声に耳を傾けてみてください。そこには、きっと経営者自身も気づいていない魅力が隠れているはずです。

採用でお悩みの方は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。経験豊富な社会保険労務士が、貴社のビジョンと価値観を明確にし、効果的な採用戦略をご提案いたします。お気軽にご相談ください。

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