労働時間について解説

当事務所のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。今回は、会社経営において非常に重要な「労働時間管理」のテーマについてご説明します。
なぜ今、労働時間管理が重要なのか
近年、長時間労働による健康被害や過労死、未払い残業代をめぐる訴訟など、労働時間に関わる問題が社会的に大きな注目を集めています。厚生労働省は2017年1月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を策定し、会社側の労働時間管理責任を一層明確にしました。
このガイドラインは、単なる努力義務ではなく、労働基準法に基づく会社の法的義務を具体的に示したものです。適切な労働時間管理は、以下の点で会社と社員双方にとって重要な意味を持ちます。
- 社員の健康維持と過重労働防止
- 未払い残業代トラブルの予防
- 労働生産性の向上
- 会社と社員の信頼関係の構築
労働時間とは何か?
まず、「労働時間」の定義を正しく理解することが重要です。労働時間とは、単に就業規則に定められた時間ではなく、「会社の指揮命令下に置かれている時間」のことを指します。
具体的には、以下のような時間も労働時間に含まれます
- 業務準備・後始末の時間
制服への着替えや業務終了後の清掃など、会社から義務付けられている準備・後始末の時間 - 手待ち時間
実作業はしていないものの、すぐに業務に従事できるよう待機している時間 - 研修・教育訓練の時間
業務上義務づけられた研修や、会社の指示による業務学習の時間
「残業代を節約するため」「予算内に収めるため」などの理由で、これらの実態を無視した労働時間管理は法令違反となります。
適正な労働時間管理の方法
ガイドラインでは、労働時間を適正に把握するための具体的な方法が示されています。
1.原則的な方法
- 会社(管理者)による現認
管理者が社員の始業・終業時刻を直接確認し記録する方法 - 客観的な記録による確認
以下のような客観的な記録を基に、始業・終業時刻を確認・記録する方法- タイムカード
- ICカード
- パソコンの使用時間記録
- 入退室記録
これらの方法は、労働時間を客観的に把握できるため、労働時間をめぐるトラブルを防止する効果があります。
2.やむを得ず自己申告制を採用する場合の措置
業務の性質上、原則的な方法による労働時間管理が難しい場合は、自己申告制を採用することもできますが、以下の措置を講じる必要があります
- 十分な説明の実施
社員や管理者に対して、労働時間の考え方や適正な自己申告の重要性について説明 - 実態調査の実施
自己申告された労働時間と実際の労働時間に乖離がないか確認し、必要に応じて補正 - 阻害要因の排除
自己申告できる残業時間の上限設定や、残業時間を抑制するための過度なプレッシャーなど、適正な申告を妨げる要因の排除 - 客観データとの照合
入退室記録やパソコンのログなど、客観的なデータと自己申告内容を照合し、著しい乖離がある場合は実態調査を実施
よくある問題点と対応策
1. 「サービス残業」文化の是正
「周りも残業しているから」「昇進に影響するかも」という理由で、残業時間を申告しない「サービス残業」の文化がある職場は少なくありません。
【対応策】
- 経営者や管理者が「適正な労働時間管理」の重要性を明確に伝える
- 残業時間の多寡ではなく、業務の成果や効率性を評価する人事制度の構築
- 業務効率化や業務分担の見直しを推進し、長時間労働を前提としない職場づくり
2. 管理者の意識改革
部下の労働時間を管理する立場にある管理者自身が、労働時間管理の重要性を理解していないケースがあります。
【対応策】
- 管理者向けの労務管理研修の実施
- 労働時間管理に関するマニュアルやガイドラインの整備
- 管理者の評価項目に「適正な労働時間管理」を含める
3. 労働時間管理システムの形骸化
タイムカードなどの労働時間管理システムがあっても、実際の労働時間と記録が一致していない場合があります。
【対応策】
- 入退室記録や業務システムのログインデータなど、複数の客観的記録を活用
- 定期的な実態調査の実施
- 労働時間の記録と実態が異なる場合の報告・是正プロセスの明確化
労働時間管理の適正化がもたらすメリット
適正な労働時間管理は、単に法令遵守のためだけではなく、多くのメリットをもたらします。
1.会社側のメリット
- 法的リスクの軽減
労働基準監督署の調査や、未払い残業代請求などのリスク軽減 - 人材の定着・採用力強化
適正な労働時間管理は「働きやすい職場」というブランドイメージにつながり、採用や定着に好影響 - 労働生産性の向上
長時間労働の是正により、社員のパフォーマンスや創造性が向上 - 健康経営の推進
社員の健康維持により、病気休職の減少やパフォーマンスの向上が期待できる
2.社員側のメリット
- 健康維持・ワークライフバランスの実現
適正な労働時間管理により、過重労働が防止され、プライベートの時間が確保できる - 適正な対価の受け取り
働いた時間に対して正当な賃金が支払われる - 職場への信頼感向上
会社が法令を遵守し、社員を大切にしているという実感が得られる
当事務所のサポート
当事務所では、「信頼と対話の架け橋」を理念に掲げ、会社と社員の双方にとって最適な労働時間管理のあり方をご提案しています。
具体的には、以下のようなサポートを行っています
- 労働時間管理の現状診断
現在の労働時間管理方法の問題点を洗い出し、改善策をご提案 - 労働時間管理システムの導入・改善支援
会社の規模や業務形態に合わせた適切な労働時間管理システムの選定・導入をサポート - 労働時間に関する社内規定の整備
就業規則や労働時間管理規程の作成・見直しをサポート - 管理者向け研修の実施
労働時間管理の重要性や具体的な管理方法について、管理者向けの研修を実施 - 労働基準監督署対応のサポート
労働基準監督署の調査が入った場合の対応をサポート
まとめ:信頼関係を築く労働時間管理を
労働時間管理は、単に法令遵守の問題ではなく、会社と社員の信頼関係を構築するための重要な要素です。適正な労働時間管理は、社員の健康と権利を守るとともに、会社の持続的な成長と発展にもつながります。
社員が安心して働ける環境づくりは、会社の最も大切な資産である「人」を守ることであり、長期的な企業価値の向上にも直結します。当事務所は、会社と社員の双方にとって最適な労働環境の構築をサポートし、「信頼と対話の架け橋」となることを目指しています。
労働時間管理でお悩みの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な社会保険労務士が、貴社の状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。